先日、当webサイトにて告知を行った『教えない授業--美術館発、「正解のない問い」に挑む力の育て方』(鈴木有紀著)が、『週間東洋経済』6月22日号の書籍欄で紹介されました。
本書は、著者である鈴木氏の所属する愛媛県美術が展開する「愛媛県美術館・博物館・小中学校共働による人材育成事業」の集大成として発刊されました。本センターは、4年間にわたり外部専門家として同事業との協働を行い、有志の美術館・博物館学芸員や小中学校教員へのファシリテーター育成事業などを実施してきました。
ACOPは、美術史などの知識だけに偏らず、鑑賞者同士のコミュニケーションの中で作品に意味づけを行う鑑賞方法です。まさに、作者や知識のある者が「教えない」からこそ自ら問いを持ち、それを他者とともに考え続ける力の育成を行っています。
自らで「なぜ?」という問いを持つために、教えるのではなく後押しすることが重要だと鈴木氏は述べています。ACOPにおけるナビゲイターの役割も同じです。作品の知識を語るのではなく、他者との対話を活発にさせるために鑑賞者の気づきや学びの後押しをすることで、鑑賞者が主体的に作品をみて、考えて、話し、聴くようになっていきます。
「教えない授業」と題された本書は、そうした主体的に学ぶ/学び続ける力を育むための場づくりをどう作ることができるのか、教育の現場で起きる多様な授業での実践例やそれに伴う先生方の感想、課題、悩みなどとともに綴られています。こうした熱のこもった実践例は、図画工作や美術の科目だけに限らず、そして子どもの教育だけに限らず、ビジネスでの人材育成にも通ずる、社会で「生き抜く力」を身につけるための手がかりとなるのではないでしょうか。正解のない問いにともに歩んでくれる一冊になっておりますので、ぜひご覧ください。